昔、大木🌲になることを夢見て、理想に燃える小さな苗木🌱がいました。
苗木はそのうち子供くらいの背の高さになりました。
「まだまだ!こんなもんじゃ全然ダメだ!」
苗木はキラキラ輝いていました。そして毎日、力いっぱい伸びました。
じきに苗木は大人の背丈を越しました。
「ぼくはなんて小っぽけで情けない姿なんだろう。完全には程遠い!」
日々そうやって気持ちを奮い起こすのでした。
そのうち苗木はキリン🦒くらいの背丈になりました。
「ぼくはこんなもんじゃ満足しないぞ。まだ全然ダメだ!」
もう大きくなった木の心は、まだまだ燃えていました。
大風の日もありました。
ひでりが続いて雨が全然降らないときもありました。
その全てを葉を食いしばって苗木は乗り越えいきました。
とうとうビル🏢くらいの高さになった時、かつての苗木は思いました。
「あぁ、まだ完全じゃないが、やっと理想に近づいてきたぞ。もう少しで俺は大木になれる…。」
小さな苗木がここまで大きくなったとき、100年近くたっていました。
苗木は年をとって、その根もとには空洞ができはじめていました。
ちょうど100年を迎えたある日、大木になった苗木は音をたてて空洞のところから折れてしまいました。
倒れたかつての苗木は、いまはまた子供くらいの高さになりました。
苗木は思いました。
「あぁ、おれはかつて、どんな時も上へ上へと目指して輝いていたなあ。」
「どんなときの自分も、スカスカになって倒れてしまったいま思い返すと、キラキラと輝いていて愛しく思う…。」
「それなのにいつもいつもこれじゃダメだとしか思わず、100年も過ごしてきたんだなあ。」
「もしまだ生命があったなら、その時はどんな大きさの自分でも、愛でて生きてみたかったなあ………」
それから一年たったある日、地面に残った株に、新たな芽🌱が出ていました。
朝露に濡れた新芽は、お日様の光にあたってキラキラ輝いていました。
fin