ありがとうございました。
こちらのお山は標高が800メートルほどあります。
「下界」と比べますと気温が5度から10度低うございます。
春は桜は遅く、例年ゴールデンウィークくらいに咲きますが、温暖化のせいか、今年は少し早かったようで、もう散ってしまって、
これからはシャクナゲがたくさん綺麗な花を付けます。
ここは冬は、目の前で水が凍っていくようなところで、修行中は手が霜焼けで酷いことになったものです。
そんな冬はちょうど、この護摩修行をすると暖かくて、まだ火が上がらないか、なんて待ち遠しいものなんですが、
これが夏になると、暑くてたまりませんね。
(うんうん笑と頷かれる)
なんでこんなに重ね着しなきゃいけないのかと思っちゃいますね。
でも、これは一番下に日本の白衣、次に中国の衣、一番上にインドの袈裟をつけていて、
仏教がインドから中国を通じて伝わって来たことを表してるので、
暑いからと言って勝手にTシャツでやるわけには行かないんですね。
(笑)
この護摩行。前に座ってるお不動さんと一体化する修行なんですが、
みなさん、このお不動さんって、どんな仏さんだと思いますか?
…怖い?
(うんうん)
怖いですよね。なんだか悪いことをしてると叱られそうな…。
でもね、この怖い顔は、仏教の言葉で言うと、「慈悲」の気持ちで叱ってくれてるんですね。
例えば、小さい子供が道路を渡るときに、
「右見て左見てもう一度右見て渡りなさい」って伝えるのは、その子供が車にはねられて、怖い思い、痛い思いをしないように、ですよね。
お母さんが子供に「危ない!」って鋭い声を出すのも慈悲の思いからです。
お不動さんはそんな思いでこんな怖い顔をしてるんですね。
それともう一つ。
この前、外国の方に、「お不動さん怖いでしょ?」って聞いたら、
「怖くない、強そうだ」って言われたんです。
お不動さんの手に持つ剣は仏の智慧を表します。もう片方の手には、索(さく)と言って、ロープを持っています。
これは皆さんを捕まえて縛り上げて、剣で脅すためなんですが、
(目が合ったお客さん、笑う)
炎を背負ったお不動さんは、
怖いだけじゃなくて、
確かに「ちから」を表してもいるんですね。
このお不動さんは、皆さんの胸の中に居るんだっていうのが、真言宗の教えです。
えー、生き物の歴史が何億年だったかは忘れてしまいましたが、
(笑)
考えてみると、その何十億年を我々は乗り越えてきている。
生き延びて来たから、あなたはここにいます。
日頃、自分では自分の力に気づかず、
自分なんて弱いと思っているかもしれませんが、
実は私たちはこの体にものすごい力を持っているんですね。
「自分たちはちゃんと生き抜く力を持って生まれて来てる。」
今日はその一点だけ、覚えて帰って貰えればいかなと思います。
お不動さんはそんなことを私たちに教えてくれてるんでした。
さて、それでは、本日の護摩行を終わります。
遠いところをお参り下さいまして、ありがとうございました。
どうぞお気をつけてお帰りになられて、
また来てくださいね。
これで失礼します。