ある農業を営むバラモンがお釈迦さまに、「働かざるもの食うべからず」と言った。
そのとき、お釈迦さまは「私にとっての農業とは、心を耕すことである」と言ったそうです。
その部分のお経を要約しました。
【次のように私は聞いた。
バラモン「私は田畑を耕し、種まきをし、朝食をとる。あなたも食べるのであれば、まず汗水を垂らして労働をすべきである。」
釈尊「バラモンよ、私も田畑を耕しているし、種まきをしている。そしてその後に朝食をとるのだよ。」
バラモン「しかし、私はあなたのクビキも、それに引かれるナガエもスキも、そもそも牛そのものも見ない。にもかかわらず、あなたはそのように言う。」
バラモン「あなたは自分も農業を営む者だと言う。しかし、私にはあなたが何を言っているのか分からない。あなたはいったい何のことを言っているのだ?」
釈尊もそれに詩をもって答えた。
釈尊「私にとっては求道の心が種、苦行が雨、智慧がクビキとスキだ。過ちを恥じることがナガエ、思慮深さがクビキやスキを結ぶひも。そして、あるがままに、いまここの存在を自覚することが、スキを正しく動かす運転者なのだよ。私は自分の身体を粗末にせず、言葉を粗末にせず、食べることも足るを知り、真理を語ることで草刈りをする。私は柔和であることによって牛を解放する。牛は努力であり、それは平安なる涅槃へ私を連れていく。退くことなく進み、憂いのないところへ至りつくであろう。」
釈尊「このように私の農業は心においてなされるものであり、このような農業が不死の甘露の果実を実らせるのである。この心の耕作を行ったなら、あらゆる苦悩から解き放たれるのである。」
バラモン「ゴータマさま、乳粥を召し上がってください。あなたは農業を営む方です。」
釈尊「私は詩の説法への『報酬』は受けとらない。これがブッダの生き方なのだ。」
バラモンはすっかり感じ入って、釈尊を礼拝し、次のように言った。
バラモン「お見事です。ゴータマさま。あなたは真理を見事に説かれました。私はあなたの元で出家いたします。」
こうして農業を営むバラモンは正式の修行者となり、のちに修行を完成させたのであった。】